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明宝寒水史は校正が不十分です。当サイト「改訂版明宝寒水史」をご覧ください。
改訂版明宝寒水史
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〒501-4302 岐阜県郡上市明宝寒水
説話中島の耳柿
明宝村史通史編下巻第十二章伝説(一一〇三頁)
天台宗の比丘尼寺が栄えとった時分じゃっていうで一千年以上も前の事じゃろう。
土地で生まれた者は何っ処へも行き場がないで、みんな生まれた土地に死ぬまでへばり付いとったんやでな。
生きとるもん(者)はあしたの食いもん(物)の心配ばっかりで、楽しみだの喜びだの、そんなもんは皆目なかったな。
そんでな、 ポック、ポックと空き腹に沁み込むような木魚の響きに乗って流れてくる尼様のやさしい読経の声がどんに有難かったか判りゃせんな。
そうやもんで、暇さえありゃ、年寄りも若いもんも、男も女も、お寺へ集まり法話に聞き入ったそうな。
そんなある日のことな、妙な男がそっと参って出ていくのを見掛けたんじゃげな。
尼様がそれからずっと気を付けておいでた処が、その男は物陰でお参りしては出ていくげな。
尼様が二、三度声を掛けてみないたそうやが、男は何か言いたそうな目で尼様を見上げるだけやったそうな。
おかしいことやと思われた尼様が、ある日そっとあとをつけて見られたそうな。
そしたらその男は近くのな、古い柿の木のねきまで来たと思ったら、急にフッと消えてまったそうな。
つまり何やな、その男は山柿の主やったってことじゃな。
「わしゃ老いぼれた山柿の主じゃで、人間の姿を借りて御仏に縋ろうとしたが、耳が聞こえんで尼様の有難い話が聞けんわい」と、尼様には悲しそうな声が聞こえたんじゃそうな。
それからの尼様は「どうかこの山柿に耳を与えてやってください」と一所懸命に御仏に念じられたそうな。
すると不思議な事にな、その年の秋になると山柿の実のな、みんなに小さな耳が付き出したってことや。
そしてな、それからその男はお寺に来んようになってな、誰もその男を見んようになったってことや。
それからこっち(それ以来)、今でもな、その山柿のことを耳柿っていうようになったんや。
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