明宝寒水史は校正が不十分で誤植があります。当サイトの正誤表をご参照ください。

　大宝二年（702）の戸籍に牟義郡郡上里ノ戸主君子部(きみこべの)波尼多(はにた)があり、牟義郡(むげのこおり)の北部にはその位置する地勢を以て郡上里(こおりのかみのさと)があったことが判る。
　この戸籍は大日本古文書には見えないが、第五十五代文徳天皇時代の斉衡二年（855）四月十九日の官符によって牟義郡から郡上里(ぐむじょうのさと)が分割されて郡上郡(ぐむじょうのこおり)が成立した。
　平安時代中期の承平年間 (931〜938)に作られた辞書とされる和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)には郡上郡の郷名に郡上及び安郡があり、高山寺本には群上及び安群と記されている。
　「安群郷の北部即ち安群上を分割しこれを略し群上又は郡上として「ぐじょう」と訓み、その余地は群下と称するべき処を古称のまま安群としたものであろう」としている。
　また、「安群又は安郡は寛知集の安具村なりければ「あぐ」と訓むべし」としているものがあるが、郡上又は群上は「ぐむじょう」と読まれ、安群又は安郡は「あぐ」ではなく「あこおり」と読まれた。
　寛知集は寛文印知集(かんぶんいんちしゅう)の略称で、寛文四年（1664）四月五日に江戸幕府が日本全国の大名に対して一斉に交付した領知判物、朱印状及び領知目録の総称である。
　「群上郡」はいつしか用字も読み方も「郡上郡」が定着し、郡上郷(ぐむじょうのごう)、安郡郷(あこおりのごう)のほかに栗栖郷(くりすのごう)及び和良郷(わらのごう)の四郷があったというがその郡域や郷域については諸説がある。